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Kagoshima Mountaineering Circle

冬の霧島韓国岳 ~樹氷の散歩道を歩く~

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約 9 分

北アルプスをめざして vol.8

1月のくじゅう山小屋泊で初めての雪山を体験してからというもの、熱に浮かされたように雪を求めているオリーブです。そうは言っても、ここは南の端の鹿児島県。簡単に雪など降るはずもありません。ましてや、ムートンブーツの出番さえない超暖冬の今年。果たして夢はかなうのでしょうか。

寒気到来

2月です。本当ならば、今が一番寒い季節のはずですが、今年にかぎって連日暖かい日が続いています。半ば諦めモードで週間天気予報をチェックしていると、待望の寒気が九州の上空に到来するとの情報が入りました。すかさず、スケジュールを確認すると2月9日の日曜日は山に行けそうです。しかもその数日前、下界には雨の予報が出ています。ということは…1700メートルの韓国岳にはきっと雪が降るはずです。韓国岳の雪情報を知るために霧島市やえびの市のホームページを検索してみましたが、数年前の雪情報しかありません。やはり暖冬の今年は雪がないのか…。たしかな情報もなく、仕事に追われ、何の計画も立てないままに土曜日になってしまいました。どうしよう…、でもやっぱり行きたい!!とういわけで、急遽リーダーが登山計画と地図を作成してくれました。時刻はすでに19:30。あわてて近所のマツモトキヨシに行き、行動食や日焼け止めを買いこみます。マツモトキヨシからの帰り道、吐く息が白く、雪山への期待が一気に膨らみました。

サンデーモーニング

2020年02月09日

日曜日の朝7時。目覚ましより早く起きだして、山ランチのために、やかんいっぱいのお湯を沸かします。お湯が沸くまでの間に、レーズン入りのトーストを焼き、目玉焼きを作り、ミルクたっぷりのカフェオレを淹れます。ビヒダスヨーグルトと奄美直送の瑞々しいタンカンを添えて、モーニングプレートの出来上がりです。山に行く日の朝はたっぷりの朝食をとることにしています。そうすると、心なしか楽に登れる気がするのです。

日曜日なので、迷わず高速に乗ります。高速道路の割引があるからです。鹿児島空港まで760円。しかし、登山口まではまだまだ遠い道のりです。山の中の1本道を走る時に限って、やけにのんびりした車が前に飛び出してくるのはなぜでしょう。あおり運転にならないように注意しながら、車を走らせること約1時間。道はまったく凍っていません。秋に来た時となんら変わらない光景に雪への夢が砕けそうになりますが、車窓から真っ白な雪をかぶった韓国岳が見えた瞬間、一気にテンションがあがります。自宅を出てから約2時間。やっとえびのエコミュージアムセンターの駐車場に到着しました。駐車場のおじさんに500円硬貨を手渡し、駐車場に入ります。駐車場は半分ほどしか埋まっていなかったので、広々としたスペースを使い、ザザッと準備を整えます。トイレをすませ、地図を広げ、コンパスを合わせ、出発です。

樹氷の森の散歩道

硫黄山が危険区域になってから出来た韓国岳への迂回路は、ひたすら森の中を行く単調な黒土の道です。泥の道を歩いていると、白い硫黄の道を行く昔の登山道が恋しくなります。時折木々のすき間から垣間見える硫黄山はもくもくと白い煙をあげ、休みなく活動しているようです。風に乗って強烈な硫黄の匂いが漂ってくると、火山の雰囲気が高まります。

3合目あたりから昔の登山道と合流します。ここからは、ゴロゴロした岩の転がる道が続きますが、鎖もはしごもない至って安全なルートです。3合目を過ぎた頃から、道に白い雪が混ざり始め、4合目くらいまでくると、まわりの木々が白くなっていきます。樹氷です。海老のしっぽです。キレイです!!

途中、鹿児島の山岳会のひとつ、黒稜会のメンバーとすれ違いました。『こんにちは~!お散歩ですか』と黒稜会、『こんちは~散歩で~す』リーダーが楽し気に挨拶を交わしています。山というところは、実にフレンドリーなエリアです。街ですれ違っても誰も挨拶なんてしないのに、山では老若男女だれとでも挨拶を交わします。もし『出会いがない』と嘆いている人がいたら、迷わず山に行くべきです。

雲と空と雪

白い雲、青い空、白い雪。青と白のコントラストが美しく、ため息がもれます。樹氷のトンネルを歩いていると、キラキラ光るものが一斉に舞い落ちてきました。まるでダイヤモンドの欠片が降ってきたような眩さです。風に舞った樹氷の雪が、頭上から降りそそいできたのです。普通の雪よりも細かいので、光を受けてキラッキラに光り輝くのです。

上空に強い風が吹いているのか、雲の流れが速く、空の模様が刻一刻と変化します。太陽が出たり隠れたりしているので、体感温度もめまぐるしく変化します。登りでは、薄手のメリノウールの長袖Tシャツ1枚でちょうどいいくらいでした。登り初めに着ていたソフトシェル代わりのレインウェアや手袋はすぐに脱いでしまいました。5合目あたりに来る頃には、暑さがピークになってきました。リーダーはなんと、半袖Tシャツ1枚になっています。『わー、寒くないですか』雪の中ですれ違う何人もの山ガールから声をかけられています。年配の山ガールからは、『きゃー、田中陽希さんかと思いました』と黄色い声をかけられています。そう言われていえば、身体が似てるかも。つかの間、有名人気分を味わい、真っ白な道を進みます。次第に雪の量が多くなり、10センチ以上にもなってきました。樹氷も立派な厚みを帯びています。どこまでも青い空に白い雲が流れ、山頂へと続く真っ白な雪道に光と影を落とします。そんな大自然が織りなす素晴らしい景色の中、大満足の気分で歩き続けます。

化粧上手

大浪池が見えてきました。ついに8合目に到着です。ここからは傾斜が緩やかになります。視界を遮る木々もなくなり、大浪池や新燃岳、高千穂峰など霧島連山のスターを眺めながらの贅沢なトレッキングです。輝く白い雪が、いつもとは違う景色を作り出しています。言うなれば、いつもノーメイクの女子が、化粧をしてハッと息をのむような色香を纏ったような…そんな景色です。できることならば、一生化粧を落とさず美しいままでいてほしいと思ってしまいます。ノーメイクにはノーメイクの(夏山には夏山の)良さもあるのですが、フルメイクの(雪山の)圧倒的な美しさには、到底及ぶはずもありません。モデル級の素材を持つ北アルプスレベルになると、ノーメイクもフルメイクも(夏山も雪山も)関係なく、来る人を虜にしてしまうのでしょう。

そして、ついに、韓国岳山頂に到着しました。1700メートルの山頂は、風が強く、雪はところどころにしか残っていません。いつもながら、山頂から見下ろす火口は深く広く迫力があります。さらに、今日の火口は真っ白な雪に覆われ大迫力の様相です。雪化粧の山は、この世で一番美しいと言っても過言ではないかもしれません。

めんどくさがる者食うべからず

雪の大浪池と高千穂峰を眺めながら、お待ちかねのランチタイムです。韓国岳の山頂は広く、見晴らしがよく、ランチをするにはうってつけの場所です。ただ、風が強いので、この時期には特に防寒対策が必要です。ザックを下ろし、中から取り出したのは、カルディでジャケ買いした上海焼きそばと、くじゅう遠征から持ち帰ってきた鮭とチーズのリゾット。その下に入っていた防寒着はそのままに、ランチの準備にとりかかりました。魔法瓶のお湯を入れしばし待ちます。この時点で非常に寒かったのですが、めんどくさくて防寒着を着るのを先延ばしにしていたら、ランチを食べ始める頃には手の感覚がなくなるくらいに身体が冷えてしまいました。まるで自分が雪だるまになった気分です。

早く防寒着を着るようにリーダーに諭され、ザックからフリースを取り出し、上着の下にINすると、それだけでぜんぜん体感温度が違います。冷たい空気で焼きそばはすぐに冷えてしまいました。冬にはラーメンやうどんなどの汁物の方が良さそうです。リゾットはあたたかく、冷えた身体に美味しくしみ込んでいきます。最初に身体を冷やしてしまったせいで寒気がとれず、じっとしていられません。それならば、動いて身体をあたためようということで、デザートのチーズ蒸しパンにたどりつけないままに、山頂を後にしました。めんどくさがらずにこまめに体温調整をすることの大切さを学んだ雪の韓国岳山頂ランチでした。

まさかのボスキャラ

曇りと晴れがフィフティーフィフティーだったこの日、下山する頃もまだまだ雪の韓国岳です。新雪だしところどころに岩肌も見えているのでアイゼンをつけるほどではなさそうです。転倒しないように注意しながら歩きます。なんと、今回、大切な相棒であるストックを忘れてきていたので、100%自分の足で下ります。いつもより足に負荷がかかっているのを感じます。5合目あたりで下から登ってくる人を、思わず二度見してしまいました。なんと、コンビニの袋を持って靴底ツルツル普通の革靴を履いています。『お兄さん、アイゼンはいらないまでも、その靴で下りるのは相当きついと思います』思わず心の中で革靴のお兄さんに語りかけてしまいました。お兄さんの心配をしながら、下山していきます。3合目を過ぎると、黒土の林の中を歩く道です。登る時には、若干凍っていたこの道が、今回いちばんの難所となりました。地味な黒い山道がまさかのボスキャラだったのです。道の真ん中は完全な泥道と化しています。こんな道通れるかよ!!と悪態をつきながら、道を少し外れた林の中を歩いてみるのですが、変な傾斜がついているので、ストックを忘れてただでさえ酷使している足に余計な負荷がかかります。そうこうしているうちに、とつぜん、キーンという鋭い痛みが右のふくらはぎを襲います。

きたーーーーー!!!

足がつってしまったのです。トレーニングの成果が出ていたせいか、最近は滅多につることはなかったのですが、久しぶりの激痛です。あわててサコッシュの中からコムレケアを取り出し水で飲みます。コムレケアは漢方なのに、即効性があるのです。しばらくすると痛みが和らいだのですが、その後も2回ほど激痛に襲われました。もはや、泥で靴が汚れるのを嫌がっている場合ではありません。甘んじてグチャグチャの泥道を受け入れました。数十分後、ボロボロの足で、ようやく登山口にたどりつきました。靴は汚れましたが、ボスキャラを抑え、なんとか予定通りの時間に下山することができました。

人生2度目の雪山登山を、ホームである韓国岳で体験しました。やはり雪山は別格です。いつもの山が全く違った山に見えました。白い山と青い空に包まれ、すっかり雪山の虜となってしまいました。南国鹿児島にもういちど寒波が来てくれること願いつつ、韓国岳を後にします。振り返ると、白く雪化粧をした韓国岳が美しくそびえていました。

2020年02月09日 Sunday
writer オリーブ

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北アルプスをめざす小説家志望のA型女子。