Yama Go!Go!

Kagoshima Mountaineering Circle

登山靴を探して ~博多天神, 登山SHOP巡り~

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約14分

北アルプスをめざして 番外編01

今回のミッションは登山靴を手に入れること。簡単なようですが、地方に住む者にとってはこれが意外と難しい問題なのです。
ナビゲーターはオリーブです。

鹿児島と登山靴

北アルプスをめざして、3年ぶりに登山を再開した私。スーパーフィートの中敷きを入れたり靴紐を赤に変えたりと自分好みにカスタマイズしたお気に入りのザンバランの登山靴でトレーニングを開始したまではよかったのですが、空白の3年間の間に、靴底のウレタンがすっかり劣化していたのです。10月13日の高千穂峰登山で靴底が見るも無残に剥がれてしまいました。幸いにも下山してから剥がれたので命拾いしましたが、もっと早い段階で剥がれていたらと思うとぞっとします。普段からのお手入れがいかに大事かを思い知りました。お肌のお手入れと同じです。大きなシミができてしまってからでは遅いのです。

剥がれしまったからには、事態を収拾しないことにはトレーニングが続けられません。10日後には次のトレーニング登山の予定が立ってます。慌てて鹿児島市のはずれにある好日山荘の小さいバージョン『ARUKU』へGO!ここの店長さんは気さくでお洒落でいい方です。お店は小さいながらも一通りのものは揃っています。もちろん登山靴もあります。お店のいちばん奥にある靴コーナーの壁の半分近くはキャラバンで埋まっています。お手頃価格でカラフルで、鹿児島の山にはベストな品揃えなんだとは思うのですが、もうちょっと玄人っぽい靴が欲しくなるのが、私という人間です。ザンバランの修理の間のつなぎの靴だからいちばん安いのでいいやと思っていたはずなのに、なんだか気がのりません。紺にオレンジのラインがおしゃれなメレルの靴17,000円にしようかなと思いましたが、いまひとつ決めきれません。こうなったらつなぎの靴はやめて、アルパインブーツを買ってしまおうかと、サレワの靴32,000円を履いてみます。なかなかいいかんじ。でもサイズがやや小さく、ちょうどいいサイズは在庫がないとのこと。若い女性の店員さんも申し訳なさそうな様子です。

脱・鹿児島!

2019年10月16日

鹿児島がだめなら福岡まで行くしかない!
2日後の10月16日の水曜日に平日休が入っていたので、急遽福岡行きを決めました。買ったばかりのアウディA1で突っ走ろうかと思いましたが、激務の合間に往復7時間も運転する自信がありません。そうかといって、新幹線を使うと、往復2万円。うーん、何だか高すぎる気がします。鹿児島―福岡間にまだ新幹線がなかったころに乗ったことのある高速バスの存在を思い出し、ネットで検索してみたところ、なんと、片道2900円という安さ!しかも3列シートで広さもありそう!お店の開店時間に合わせて、早朝のバスにのり、帰りは時短のため新幹線を使うことに決定し、さっそくWEB予約♪

最近、すっかり登山モードになっているせいで、街に行くのに、塩飴やちいさなお菓子を『行動食』入れのポーチに入れて、いつも買い物に使っているパタゴニアのどでかいトートバッグにINします。何でも入るこのバッグ、軽くてとにかく便利です。財布やスマホはすぐ取り出せるようにサコッシュに入れます。靴下はスマートウールをチョイス。靴を履きまくるためです。この秋いちばんの冷気が来るという天気予報をみて薄いウインドブレーカーも持っていきます。山の道具はちょっとした旅にもとっても役に立つものばかりです。もちろん水や食料も抜かりなしです。

行きは6時10分に鹿児島中央駅を出る高速バス桜島号に乗るのですが、早すぎて電車もバスもありません。5時45分に自宅前に迎えに来てくれるよう電話でタクシーを予約します。

福岡行き当日の朝、仕事に行く日よりもずっと早い時間に飛び起きます。余裕を持ったはずなのに、いつものごとく時間ギリギリに家を出ます。すでにタクシーはマンションの前でスタンバっています。信号が赤になると脇道に入りビュンビュン飛ばす素敵な運転手さんのおかげであっという間にバスターミナルへ到着。時間に余裕があったので、近くのコンビニで、さらに行動食を買い足します。すっかり遠足気分です。空を見上げると、鹿児島のランドマーク、アミュランの横に丸い月が白く輝いています。満月の光を浴びて幸先よく登山靴の旅が始まりました。

快適!バスの旅

バスターミナルには長蛇の列ができていました。こんなに人が乗れるのかと心配しましたが、そのほとんどは空港行きのバスを待っている人々でした。桜島号より前に到着した2台の空港行きのバスが長蛇の列をすべてのみ込んで走り去りました。われらが桜島号に乗り込んだのはわずか10人程度。
『今日はがらがらです。思う存分シートを倒して、どこでも自由にお使いください。私は目をつぶります』と博多弁の親切な運転手がマイクでつぶやきます。旅慣れた乗客は、席に着くなりシートにもたれて寝る体制を整えていますが、私はと言えば、久々のバスに興奮し、全く眠れそうもありません。フットレストを上げ下げしてみたり、充電満タンのスマホをさらに充電してみたり、バスの装備のひとつひとつを点検し、進化したバスに感嘆の声をあげます。ひととおりバス事情を把握した後は、早朝の朝食です。前日にセブンイレブンで買った新商品のエビサンドと珈琲をいただきます。自宅を出る時にレンジで温めてきたので、プリッとしたエビがほんわりあたたかく、幸せな気持ちになります。


まだ車の少ない高速道路を、バスは快調に走り続けます。普段は絶対に見ることのない朝日を写真におさめます。えびのあたりに来ると、車窓から3日前に登った高千穂峰が見えました。韓国岳や栗野岳もそばに控えています。こんなところからも霧島連山オールスターズを見ることができ感無量です。えびのPAで1回目の休憩です。『今日は少ないので、そろい次第出発して早めに到着ましょう』という運転手さん。その案、猛烈に賛成!ほんと気の利く運転手さんです。

7:13にえびのPAを出発です。えびのPAはあまり停まったことのないPAでしたが、トイレが新しくてきれいでした。8:00には美味しいものがたくさんある宮原SAを通り過ぎます。ここで休憩していたら、絶対買い食いしていたことでしょう。2回目の休憩は北熊本PA。行きたくなくても念のためにトイレに行きます。8:40、いよいよここからはノンストップで福岡をめざします。まったく眠くならないので持ってきた文庫本を読んでみますが、興奮して集中できず、断念。一眼レフでお気に入りのグラナイトギアのサコッシュを撮影してみます。丈夫で軽くて、便利なポケットや仕切りがあって、何よりお洒落なカラーとデザインが魅力です。山はもちろんのこと、旅行やフリーマーケットに行くときにこのサコッシュは大活躍です。いまや手放すことのできないデキル相棒です。

バスは快調にとばし続け、予定より20分以上も早く天神高速バスセンターに到着しました。半分くらいの乗客がここでバスを降りました。またバスに乗る時には、この運転手さんのバスに乗りたいと思いながら、快適だったバスに別れを告げます。

懐かしの好日山荘 -憧れと偶然-

天神高速バスセンターから続く通路をひたすら歩きます。矢印に沿って進んでいくと、一度も外へ出ることなく、ひとつめの目的地であるパルコへ到着しました。エスカレーターで上ります。まだほとんど人はいません。目指すは本館8階です。ワクワクしながら歩いていると本館へ続くシャッターが目の前で開き始めました。まるで私のために通路を開けてくれているようです。モーゼの十戒を思い出します。
8階につくと、目の前に懐かしい好日山荘がありました。5年前、鹿児島天文館の好日山荘にいつも入り浸っていたことを思い出します。人間、歳の分だけ思い出が増えていきます。

懐かしの好日山荘にまだ客はいません。貸し切り状態です。ずらりと壁に並んだ登山靴。東京に比べると数は少ないですが、今の私にとっては天国です。鹿児島に比べるとキャラバン率は低く、憧れのラスポルディバも涼しい顔で鎮座しています。鮮やかなグリーンのスカルパや真っ黒のダースベイダーのようなマムートもあります。

真っ先に手に取ったのは、ネットで見てかっこいいなと思っていたラスポルディバのトランゴタワーGTX。キャッチコピーは『登山シーンをトップレベルで牽引する存在』です。登山に特化したシューズとして、これからの登山シーンをトップレベルで牽引する唯一無二の存在なのだそうです。アイゼンを装着するためのコバは後ろにのみついてます。足首をきっちりホールドしながら、自由度を大幅に高める『3Dフレックスシステム』やソールの接地部分を斜めにすることで衝撃吸収性とグリップ力をUPさせた『インパクトブレーキシステム』など最新のテクノロジーが搭載されています。カラーはエメラルドとライトグレー×ベリーの2種類があるはずですが、好日山荘にはライトグレー×ベリーのみが置いてありました。クールな販売員はもう一色の存在さえ知らない様子だったので、自分の記憶に自信がなくなります。税抜き44,800円と立派な価格に迷いが生じ、もうひとつ、気になっていた同ブランドのトランゴTRKGTXを見てみます。キャッチコピーは『次元を超えた高性能』。価格は税抜27,700円。キャッチコピーだけ見ると、もはやどっちが上位クラスなのかわかりません。説明書きによると、“ハイキングやバックパッキングに最適な超軽量マウンテンブーツで、新テクノロジー『サーモテックアプリケーション』により、薄く軽量で防水性と保護力に富むアッパーが完成。通気性と防水性に優れるゴアテックスを内蔵し、自由度を損なうことなく足首を保護する『3Dフレックスシステム』を採用した”そうです。最初に44,800円を見てしまったせいで、27,700円がお手頃価格に感じ、あやうく買ってしまいそうになりますが、よく考えるとトランゴTRKGTXは修理中のザンバランと同じカテゴリーだということに気がつき、混乱します。私の混乱をよそに、クールな販売員は相変わらずクールに佇んでいます。助言を求めようにもうまく説明できる自信がなかったので、とりあえず一度その場を離れて考えてみることにします。『少し考えてみます』その場で買う気がない時に使う常套句を残し、気分転換に店内を散歩することにしました。

店内は、カラフルなロープやヘルメット、憧れのアイゼンやクライミングシューズなどワクワクするもので溢れています。ほんと、見ているだけで幸せです。気分転換を図ったところで、再度靴のコーナーに舞い戻ります。リフレッシュした目で見てみると、やはりトランゴタワーGTXが目に飛び込んできます。じっくり20分ほど観察し、通りかかったショートボブのにこやかな販売員に試着の許可をとり、履いてみます。ザンバランと比べると足首の上までがっちりガードされ、固い靴底と相まって足全体が高機能ロボットになったような感覚です。ヨーロッパの靴なので、サイズ選びが難しく、39か40か判断に迷います。にこやかな販売員が計測器でサイズを測ってくれました。24.2㎝でした。39.5というサイズがあればそれが最適かもしれません。

サイズ選びに難航し、なんとなく靴の棚の端の方に目をやると、鹿児島ではお目にかかれなかったアプローチシューズが視界に入ってきました。アプローチシューズとは、クライマーがクライミングをする時に目的地までの道を歩くために履くシューズのことです。ある程度の岩稜が登れるソールをそなえ、それでいて歩きやすく、クライミング時に腰に下げられるくらい軽量に作られています。スニーカーとトレッキングシューズのハーフ&ハーフといったところです。将来、北アルプスに行くことを考えると、上高地から延々と続く岩稜までの道をアルパインシューズで歩くのは大変そうです。平地を歩くためにアプローチシューズがあると便利だし、鹿児島から長野までの道中にスニーカーではなくアプローチシューズを履くのを想像するとなんだか玄人っぽくて素敵です。偶然みつけたアプローチシューズから北アルプスへの妄想が膨らみます。ちょうど目の前あったのアプローチシューズが大幅に値引きされています。黒いシューズに上から垂れ下がるような独特の形をした黄色いラインが入っています。『進撃の巨人』で巨人化したあとのエレンの目の下に残る放射状の瘢痕のように見えます。
ちょっとビミョーだけど値引き率の高さに惹かれ、手に取ってみるとMENSでした。あぁ残念…と思ったら、WOMEMSも発見!しかも、こちらは、くすんだパープルに濃い紫のラインが入っているので、『進撃の巨人』感が全くありません。逆にシックで普段着に合わせてもすんなり溶け込みそうな雰囲気です。試着してみるとサイズも問題ないようです。鹿児島から来ていて、これから他の店も見て回ることを告げると、にこやかな販売員が取り置きをしてくれると申し出てくれました。感謝!

硬派な石井スポーツ -衝撃の足型診断-

パルコを出て、次の目的地である天神ビブレ4Fの石井スポーツへ向かいます。時間はすでに11時半を回っており、石井スポーツには結構お客さんが入っていました。ここの販売員さんは落ち着いた年齢でプロっぽい目をしています。ラスポルディバのサイズについて聞いてみたいなと思った頃にほどよいタイミングで声をかけてくれました。自分の足のサイズがいまいちわからないと相談すると、足のサイズを測ってくれました。サイズは23.8㎝。さきほどより少し縮んでいます。しかも今度は足の形まで見てくれます。自分では幅広だと思っていたのですが、足の幅は広くなく、ヨーロッパの靴でも問題ないとのことでした。衝撃的だったのは、左足が偏平足だったこと。右足もやや偏平足気味なんだとか…。山歩きの後半、足が異様に疲れるのは、足裏のアーチがないことが大きな要因だったのです。どうりでスーパーフィートが手放せないわけです。

石井スポーツにはラスポルディバのトランゴタワーGTXのエメラルドがありました。ネットでよく見る個性的なカラーです。これはこれで可愛いけど服に合わせにくそうです。サイズは39でいいと販売員さんは断言します。ここでも価格は44,800円。ネット価格を知っているだけに迷います。石井スポーツにもアプローチシューズが揃っていました。好日山荘にはなかったアークテリクスのアプローチシューズもあります。薄いブルーが爽やかで乙女心をくすぐります。1週間後のトレーニング登山のために何としても靴は手に入れて帰りたいけど…。またもや迷いすぎて、冷静な判断ができません。頭を冷やすために他のコーナーを見て回ります。大好きなマウンテンイクイップメントのウェアもたくさんあります。ロングパンツを3~4本試着しましたが、とりあえず買わないことにしました。セールになっていたメリノウールのTシャツを買い、店を出ます。

腹が減っては戦はできぬ

空腹を感じ行動食のチョコレートをかじります。まだ肝心の靴を調達できていません。ランチにラーメンの予定だったのですが、時間がないので鯛焼きに変更します。と言っても、新天町商店街にある鳴戸鯛焼本舗は天然物(1匹ずつ鋳型で焼く)でとっても美味しいのでしばし行列に並びます。鯛焼き数匹をお土産に買い、熱々の1匹を頬張ります。本物の鯛より鯛焼きが好きかもしれません。

お腹が満たされたところで、再び登山靴を求めて好日山荘に向かいます。たくさんの登山靴を見て混乱していた私の能が、鯛焼きの糖分を得て冷静さをとり戻しました。より有利な方法で登山靴を手に入れるための戦略が次々と浮かんできます。この時点で、高価なアルパインシューズはネット購入も含めてもう少しじっくり考えることに心は決まっていました。実店舗でサイズ感がわかると登山靴でもネット購入できる気がします(販売員さんごめんなさい)。店舗が近くにあって、いつでも何でも相談できる販売員さんがいたらもちろん高くても店舗で買うんですけど…(言い訳っぽくきこえるかもしれませんが本当です!)。

好日山荘でもまた何本かロングパンツを試着します。購入はしません。欲しいなと思っていたノースフェイスのライトアルパインパンツは鹿児島のARUKUにも売っていたのでそちらで買うことにします。時間が差し迫ってきたので、取り置きしてもらっていたサレワのアプローチシューズを購入します。23,000円が14,800円に大幅値引き!さらに好日山荘の秋のキャンペーンで10%ポイントがつきました。
うん!満足!!これでトレーニング登山が続行できます。

旅の〆 -博多といえば博多ラーメン-

晴れ晴れしい気持ちで博多駅行きの地下鉄に乗り込みました。まだ帰りの新幹線まで少し時間があります。博多駅につくなり、筑紫口にある『博多めん街道』に直行します。どの店に入ろうか少し迷ってから青い看板の『博多らーめんShin-Shin』に入ります。なんとかラーメンにありつけました。博多に来たからにはやっぱりラーメンを食べないわけにはいきません。鹿児島人ですが、ラーメンは断然博多ラーメン派です。以前、半年ほど福岡に滞在していた時にすっかり博多ラーメンのとりこになってしまったのです。

アプローチシューズと博多ラーメンで身も心も満たされ、帰りの新幹線では爆睡し、気持ちよく鹿児島に帰着しました。

というわけで、登山靴の故障のためにあわや北アルプスへの夢が絶たれるかという窮地に陥っていた私ですが、アプローチシューズを買うという離れ業で、無事、窮地を逃れることができました。鹿児島で気に入った登山ギアを揃えることの難しさを実感する今日この頃。ピンチを切り抜け、また1歩北アルプスに近づけたような気がします。

2019年10月16日 Wednesday
writer オリーブ

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member Olive

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北アルプスをめざす小説家志望のA型女子。