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Kagoshima Mountaineering Circle

くじゅう連山へ遠征登山 -Day1-

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約 12 分

北アルプスを目指して vol.03

今年限りの国民の休日に北アルプスをめざす第3回目のトレーニング登山に行ってきました。
ナビゲーターはオリーブです。

トレーニング登山第3山は前回登った高千穂の峰を別ルートで攻めようかという流れになっていたのですが、10月22日、23日に連休がとれたので、急遽、くじゅう連山へ遠征することにしました。初めての鹿児島県外への遠征登山です。

阿蘇・くじゅうへの旅

久住山といえば、日本百名山にも選ばれている有名な山です。もちろん、私も『くじゅうに登ってきた』といううらやましい話を何度も知人からきいていましたが、超ビギナーの自分には少々敷居の高い山だと思っていました。山GoGoでも九重テント泊の企画があったのですが、当時の私は自分にはとても無理だと諦めていたのです。しかし、北アルプスをめざしている今、そんな生っちょろいことは言ってられません。厳しい冬の季節が来る前に、少しでも早くステップアップを図りたいという野心に燃え、くじゅう連山に挑むことにしました。

あらためて『くじゅう』を調べてみると、くじゅうや久住や九重などいろんな表記があり少々戸惑います。火山群全体などを指すのに『九重山』または『くじゅう連山』や『九重連山』とし、火山群の主峰である山を『久住山』と呼んでいるようです。くじゅう連山は、九州の屋根と呼ばれていて、標高1791mの中岳を最高峰に、1700m以上の山々が連なります。韓国岳1700mが今まで登った最高峰である私としては、くじゅう連山のどれか一つの山に登れたらいいかなと思っていたのですが、リーダーが立てた登山計画では、1762mの星生山と1787mの久住山を縦走することになっています。牧ノ戸登山口からスタートし、沓掛山~扇ヶ鼻分岐~星生山~久住山~久住分かれ~扇ヶ鼻分岐~沓掛山~牧ノ戸峠の10㎞を超えるコースです。ちょっと心配になりますが、『そんな弱気で北アルプスに行けるのか!』と自分に喝を入れます。

体力を考慮して、前泊することになりました。牧ノ戸登山口から登るので、牧ノ戸温泉の九重観光ホテルがいちばん近いのですが、祝日のその日は素泊まりでも7,000円。それならいっそ2食付きの方がお得なんじゃないかと見てみると12,000円以上になります。早朝に出発することを考えるとなんだかもったいない気がします。近くにある安いログハウスなどはすべて満室です。ああでもない、こうでもないと迷った挙句、車で15分くらいの距離にある国民宿舎久住高原荘、素泊まり4,900円に決定しました。楽天トラベルの総合評価は4.14。九重観光ホテルの3.72を上回っているではないですか。国民宿舎、なかなかやりますな!

ドライブ日和

2019年10月22日

10月22日、鹿児島を朝8時に出発します。突き抜けるような晴天です。今日は登山はしないので、のんびりドライブです。先日、福岡まで行って入手したサレワのアプローチシューズが足元を飾ります。履き心地はいつも履いているニューバランスのスニーカーとほとんど変わりません。ローカットなので、何の違和感もなく街中に溶け込みます。一泊するだけなのに、荷物が恐ろしくたくさんあります。今回は車移動だからいいものの、北アルプスに行く際に、飛行機やバスなどに乗ることを考えると、もっと効率的な旅支度ができるように訓練する必要がありそうです。

国民の祝日なので、嬉しいことに高速道路料金が30%OFFです。先日の博多天神登山靴探しの旅の時には、寄ることのできなかった宮原SAに立ち寄ります。さすが人気の宮原SA、たくさんの車がひしめき合っています。試食コーナーも充実していて活気があります。Bakery Nature という名前のおしゃれなベーカリーに美味しそうなアップルパイが並んでいました。『数量限定』の札が立っています。限定といわれると買ってみたくなるのが私という人間です。吸い込まれるように店内に入り、『数量限定』のアップルパイと『いちばん人気』のメロンパンを買い込みます。売店を見回ると、九州各地の名産品がずらりと並んでいます。冷蔵コーナーに熊本名産日奈久竹輪をみつけ、今夜のおつまみにとチーズ入りのものを買ってみます。冷蔵だけど、秋だからまぁ大丈夫でしょう。美味しいものをたくさん入手し、ほくほくした気持ちでアウディA1に乗り込みます。空はどこまでも高く澄み渡り、車窓にはしっとりとした秋の景色、カーステレオからはディスコティックなサカナクションのリズム。これ以上ないドライブ日和のなか、車は阿蘇・くじゅうへと向かいます。

ミルクロードと絶景

熊本ICから一般道におり、阿蘇方面をめざします。今回はミルクロードを通ってくじゅう入りする予定です。車のナビとスマホのナビが微妙に違う道を案内してくるので、疑心暗鬼になりながらも慎重に走ります。無事ミルクロードに入り、しばらく行くと、だんだんと壮大な阿蘇の風景が広がってきます。柔らかそうな緑の草で覆われた草原や丸く膨らんだ丘が重なるように続く景色は、阿蘇独特のものです。アニメの世界に入り込んだような牧歌的な光景に心が和みます。ハイジやペーターがそこらを走り回っていても何の違和感もないような平和で穏やかな光景です。

素晴らしい阿蘇の風景を写真に撮りたいのですが、ミルクロードは一本道なのでなかなか停車できる場所がありません。写真が撮りたくてうずうずしている時に、阿蘇の山々を一望できる大パノラマが目の前に広がりました。感嘆の声をあげます。ちょうどドライブインのようになった駐車場があったので、迷わず車を停めて、大パノラマを見渡す丘の上に走ります。かぶと岩展望所です。一部噴煙を上げる阿蘇五岳や阿蘇外輪山、左手の方にはくじゅう連山が大きく広がります。外輪山に守られるように佇む阿蘇市の街並みも眼下に見ることができます。その壮大さ、美しさに心が洗われるようでした。地震の影響で立ち入り禁止になっているところもありましたが、黒い土の中から名もなき小さな花々が力強く咲いています。見たこともない紫色の小さな花が綺麗に咲いているのをみて、思わずシャッターを切ります。その時は全く知らなかったのですが、この花はヤマラッキョウといって9月から10月に山地の草原に咲くのだそうです。

阿蘇の雄大な風景に陶酔したままミルクロードを走ります。この後には、かぶと岩展望所よりももっと大きく何百台もの車やバイクが集まる展望所が待っていました。大観峰です。とにかく人が多すぎて、最後の展望所までたどり着くのには時間がかかりそうです。入口付近に車を停めて、めざすくじゅう連山を眺めます。お昼になり、だいぶお腹もすいてきました。そうなってくると、一刻も早く目的地であるくじゅうに到着したくなります。混雑する大観峰を後に、一路くじゅうへ向かいます。

こんにちは、くじゅう!

ミルクロードを抜け、30分ほど走ったころに瀬の本高原にたどりつきます。立派なレストハウスの広大な駐車場には、たくさんの車や観光バスが所狭しと並んでいます。時刻は12時を回り、お昼にちょうどいい塩梅です。そろそろランチでも…と言いかけたのですが、リーダー、わき目もふらずにくじゅう連山への道を走り続けます。やまなみハイウェイをぶっとばし、明日の登山開始場所となる牧ノ戸峠に到着しました。まだ駐車場は満杯です。登山を終えた人たちを見て、明日の今頃の自分を想像してみようとしましたが、うまくいきません。日の出前の起床、10㎞を超える歩行距離、1700メートル級の2山縦走と今までに経験のない数々の条件を前にブルっと武者震いがおこります。

今日の目的地は、牧ノ戸峠ではなく、タデ原湿原の広がる長者原です。そのまま車をぶっとばします。脇道にもたくさんの車が停まっています。宿泊しようか迷った九重観光ホテルを通り過ぎ、しばらく走ると広々とした景色が広がります。ここがかの有名な長者原です。こんな山の上に、こんなに広くて立派な駐車場や施設があることにまず驚きます。満杯の駐車場になんとか車を滑り込ませ、長者原の土を踏みます。空気の美味しさにしばし空腹を忘れそうになりますが、一瞬のことです。車を停めた駐車場のすぐ脇にある年季の入ったドライブインのような建物の前に『うどん』の旗が揺らめいているのが目に入ります。ここでランチに…と言いかけたのですが、リーダーは迷うことなく『タデ原湿原』の看板の方へ歩きだします。あわてて後を追い、すすきの道を少し歩くと、タデ原湿原散策コースが書かれた看板が見えてきます。当然いちばん短い20分コースを行くのかと思いきや、またもや迷うことなく40分コースを選びます。うぅ、お腹空いたよぉと思っていると、あたり一面にススキが広がる広大な湿原の中を白い木道がくっきりと伸びる雑誌やネットでよく見るタデ原湿原の景色が広がりました。湿原の向こうには3つの峰が並ぶ三俣山が赤く染まっています。

“夏が来れば思い出すはるかな尾瀬とおい空 きりの中に浮びくるやさしい影野の小路 みず芭蕉の花が 咲いている夢見て咲いている 水のほとり”

場所も季節も違うのですが、小学生の頃に歌った『夏の思い出』のメロディーが浮かんできます。晴れ渡った空と金色のススキ、赤く染まる山々…。美しい景色を前に、驚いたことに本当に空腹を忘れていました。湿原に伸びる粋な木道をスキップしたい気分です。いつまでも歩いていたいと思えるような素敵な遊歩道でした。あっという間に40分コースを歩き切り、スタート地点に舞い戻りました。実際には40分もかかりませんでした。こどもや高齢者の速度も考えて長めに設定してあるのだと思います。

長者原グルメレポート

時刻は2時。今度こそランチをとることで合意しました。素晴らしいタデ原湿原の景色で空腹感が若干おさまっていたので、少し離れた場所に見える建物も見てみることにします。横断歩道をわたり、芝生の広場のようになっているところを通り過ぎ、目的の建物に近づくと、そこはレストハウスやなまみでした。1階のカフェのカウンターにはソフトクリームを求める人の列ができていました。やまなみバーガーを頬張っている男性もいます。忘れていた空腹感が目を覚まします。ハンバーガーごときではこの空腹感はおさえきれそうもありません。
カフェの奥には階段があり、2階はレストランになっているようです。階段横のガラスケースには、カレーやステーキやハンバーグなど美味しそうな食品サンプルが並んでいます。レストランは3時までという注意書きを見て、一目散に2階へあがります。2階はガラス張りの展望レストランです。1階の混雑ぶりとは裏腹に2~3組の客がいるだけです。スケール感のある景色を眺めながら、注文した『和牛とふわふわ卵のオムライス』を待ちます。そしてついに待望のランチが運ばれてきました。卵を3個くらいは使っていそうなふわふわのオムライスにたっぷりのデミグラスソースをからませていただきます。予想を上回る美味しさです。なぜこんなに空いているのかが不思議です。

ランチを満喫して1階におり、おちついてあたりを見渡すと奥の方にモンベルのショップまであります。さすがはくじゅう!九州一の人気者はそこらの山とは格が違うようです。お腹は満たされていたのですが、やはりみんなが群がるソフトクリームを食べてみたいということで、やまなみミルクソフト350円をゲットします。夜のデザートのために『きすみれロール』や『やまなみ牧場ヨーグルト』も買ってみます。すっかり食べ歩きの旅と化したところで、レストハウスやまなみを後にします。

昼下がりのひととき

すぐ近くにある長者原ビジターセンターへと向かいます。ここでは、くじゅうの情報を知ることができます。鳥や植物、生態系など色んな角度からくじゅうが紹介されています。奥には半円形をしたガラス張りの休憩所のような場所があり、山の雑誌や本もたくさん置いてあります。三俣山を臨むこの休憩所で、どっしりとした革張りのソファに身を沈め、しばし山談義に花を咲かせます。阿蘇で撮った紫色の花がヤマラッキョウであったこともこのビジターセンターで知りました。無料でもらえるたくさんの資料のほか、防水仕様のくじゅう連山の地図も300円で手に入れました。地図を買うとなんだか上級者になったような気になります。

いよいよ陽が傾いてきました。チェックインは夕方4時からです。そろそろ宿の方へ向かうことにします。素泊まりなので、食事を調達しなければならないのですが、近くにコンビニはなさそうです。いざとなったら宿で食事をつけてもらおうと思いながら、途中の瀬の本レストハウスへ立ち寄ります。すでに4時を回っていましたが、まだたくさんの人がいます。レストハウスの中にヤマザキショップが入っていました。小さなコンビニです。手作りパンが全て50円引きに、お弁当が100円引きになっています。ラッキー♪塩パンやはちみつパン、のり弁やカップ麺、スポーツドリンクやキリン一番搾りを次々とかごに入れます。
車に乗り込む時に、くじゅうの山々を見渡すと、日の暮れかけた空が青からオレンジへと綺麗なグラデーションを描いています。もうすぐくじゅうに夜がやってきます。

国民宿舎の夜

瀬の本レストハウスから10分も走ると、今夜の宿、国民宿舎久住高原荘が見えてきました。『ほんとにこれ?』と建物の名前を確認します。間違いないようです。思っていたよりもずっと立派な外観です。駐車場へと続くスロープや建物を取り囲む芝生や木々も綺麗に手入れされています。正面玄関には数台のバスも停まっています。コンクリート造りの大きな門から中へ入り、左手にある受付でチェックインを行います。人の良さそうな初老の男性がオートロックではないのでご注意くださいと言って、銀色の鍵をくれました。食事がつかないプランでも、簡単なうどんなどはレストランで食べられるとのことです。

赤いエレベーターに乗り2階の部屋に向かいます。ドアを開けると、玄関と板の間があり、その先に6畳の和室があります。畳は青く、まだ新しいことが一目でわかります。6畳の奥に小さな板の間があり、一人掛けのチェアが2脚と、ポットがのったテーブルと小さな冷蔵庫が置かれています。もちろんテレビもあります。正直、もっと古びた侘しい部屋を想像していたので、その清潔さに驚きました。窓のカーテンを開けると、手入れされた庭の向こうに赤く染まったくじゅうの山がそびえています。素敵なマウンテンビューにテンションが上がります。日が暮れないうちに写真をとらないと!と焦って撮影のため外に出ます。夕方5時のくじゅうは薄いウインドブレーカーを着ていても少し肌寒いくらいでした。

まもなく6時。ほとんどの泊り客は夕食会場にいる時間です。いまがチャンス!と温泉に向かいます。予想は的中し、温泉は貸し切り状態。白濁した湯をたたえる露天風呂にひとりでゆっくりと浸かり明日の英気を養います。

あったかい温泉に浸かりすっかりくつろいだところで、いよいよディナータイムです。買ってきたのり弁やカップ麺、ポテトチップスをひろげ、一番搾りで乾杯です。明日の段取りを話し合いながらのささやかな宴会です。
食事のあとは、初めての県外遠征を祝って、シングルモルトウイスキーベンローマックで乾杯します。10時をすぎ、あわてて就寝します。到底眠れそうもないので、持ってきた入眠剤の力を借りることにします。それでも興奮と不安でなかなか寝付けず、布団の中でごろごろ転がりながら睡魔を待ちます。くじゅう遠征1日目が終わり、明日はいよいよトレーニング登山です。興奮する気持ちをなだめ、ひたすら目を閉じ、いつしか無事に心地よい眠りにつくことに成功しました。

2019年10月22日 Tuesday
writer オリーブ

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member Olive

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北アルプスをめざす小説家志望のA型女子。